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日本大学経済学部経済科学研究所 助教の江上 弘幸氏が「ビデオゲームは精神的幸福感をもたらす」という研究結果を発表しました。論文は2024年8月19日に科学誌"Nature Human Behavior"に掲載されています。
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江上氏は日本大学の他、立命館大学の衣笠総合研究機構 ゲーム研究センターで客員研究員を務められ、人文・社会 / 経済政策 / 応用ミクロ計量経済学、開発経済学、医療経済学といった分野で研究をされています。
ゲーム機の所有とプレイ時間増は心理的苦痛を軽減、生活満足度を向上
公開された論文の要約によると、この研究では2020年から2022年の間、日本におけるビデオゲームの精神的健康への因果効果を調査しており、ビデオゲームの普及が精神的健康に悪影響を与えるという懸念があるものの、これまでの研究は相関関係に基づいていることが多く、因果関係の調査が必要であるとしています。ゲーム機の抽選(2020年から2022年は新型コロナウイルス流行により抽選が実施された)を自然実験として使用し、約9万7602人のデータを分析。その結果、ゲーム機の所有とプレイ時間の増加が心理的苦痛を軽減し、生活満足度を向上させることが判明したとのことです。
ゲーム機の所有が心理的苦痛を0.1~0.6標準偏差軽減し、生活満足度を向上させたことや、因果フォレスト機械学習アルゴリズムを用いた分析では、ゲーム機の種類により異なる影響が見られ、ある機種では青少年や女性に対して小さな利益をもたらし、別の機種では青少年に対してより大きな利益をもたらすことが示されたと記されています。
なお、調査参加者97,602人の調査対象者のうち8,192人が抽選に参加し、97,602人の回答者の年齢については、約4分の1が10歳から25歳で39%が45歳から69歳となっており、職業は、約21%が学生、10.7%が無職、39%が正社員でした。抽選に参加した8,192人の3分の1以上(35%)がハードコアゲーマーで、約20%がコアゲーマーとのことです。この調査でのハードコアゲーマーは1日1時間30分以上費やしています。
論文では分析結果から、ゲーム機の抽選に当選すると心理的健康や全体的な生活満足度にポジティブな影響を与えることや、ニンテンドースイッチとPS5の両方で良い効果が見られ、ニンテンドースイッチにおいて心理的な改善の度合いがより高いことが示されました。そのほかニンテンドースイッチやPS5の所有とゲーム時間の増加が幸福感を向上させることや、他の分析において、ゲーム機の抽選によりゲーム時間がより大幅に増加した人がより大きな幸福感の向上を経験したことが示されています。なお、サブグループ分析では、ゲーム時間が3時間を超えるとビデオゲームの心理的利益が減少することも明らかになったとのことです。
なお、この研究結果は抽選に当選したプレイヤーがニンテンドースイッチやPS5を購入しプレイ時間が0~4時間増加した場合の影響を反映しているため、普段ほとんどゲームをしない人が突然極端に長時間のゲームをするようになった場合の考察や、ニンテンドースイッチとPS5以外のプラットフォームでのゲームプレイの考察には適しないとしています。
論文"Causal effect of video gaming on mental well-being in Japan 2020-2022"はnature human behaviorで公開中です。 |
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